ライフプランニングでは将来必要な金額の目標を設定しますが、物価上昇率の考慮は欠かせません。今の肌感覚での金額が、将来どの程度になるのかを予想するのに「終価係数」を用います。
また、目標金額を貯めるために毎年いくら積み立て運用していくかを想定するのに「減債基金係数」を用います。
貯蓄なし、国民年金の両親を介護施設に入居させた場合に、どの程度不足するのか(子が負担する必要があるのか)計算してみました。

インフレ傾向が強い昨今、お金が目減りする、って良く言われますね。
将来の金額を算定し、ライフプランをイメージしてみます。
「終価係数」とは“今のお金を未来にふくらませる”
終価係数(しゅうかけいすう)とは、
「今のお金を利率◯%で運用したら、将来いくらになるか」を計算するための係数です。
応用して「今後〇%ずつ物価が上がった場合、将来いくらになるか」を想定することができます。
式は割とシンプルで、
終価係数 = (1 + r)^n
- r = 利率(年利)
- n = 期間(年数)
たとえば年利2%で10年間運用するときの終価係数は
(1+0.02)^10 ≒ 1.219。
つまり「今の100万円が、10年後には約121.9万円になる」ということになります。
よくわからない…。計算苦手…。と思っても大丈夫です!
ネット上に計算できるサイトがたくさんあります。
私のおすすめは「高精度計算サイト keisan」さんです。
昨今の物価上昇率は消費者物価指数でみると3%前後となっています。
例)今年:10,000円 → 1年後:10,300円 → 10年後:13,440円
今年10,000円の商品が10年後には13,440円お金を出さないと手に入らなくなる
「減債基金係数」とは“未来の必要額に対して、毎年の積立額を逆算する”
減債基金係数(げんさいききんけいすう)とは
未来の大きな出費に備えて「毎年いくらずつ積み立てたらいいか」を教えてくれる係数です。
将来「必要額 FV(Future Value)」が決まっているときに、一定利率 r で n 年間積み立てをしたら、毎年いくら積み立てればいいか?
数式は以下の通りです。
減債基金係数 = r ÷ ((1 + r)^n - 1)
- r = 年利率
- n = 年数
「毎年の積立額 A」 を求めるときは、
A = FV × 減債基金係数
よくわからない…。と思ってもご安心を!
「高精度計算サイト keisan」さんで計算できます!
例)年利3%で積み立て運用し、10年後に200万円貯めたい
→毎年8.7万円ずつ積み立て複利運用する
親の介護を例に見積もってみた
私の背景は以下の通り。実家問題は全面的に子である私、兄、姉で解決しなければならないと思っています。
終価係数・減債基金係数を用いて、介護費用の見積もりと、その対策のためにいくら準備していく必要場あるかを実際に試算してみます。
ステップ1:仮定をする
- 今の年齢:父・母 60代、自分 30代
- 親の金融資産:ほぼ無し
- 親の年金:父、母ともに国民年金
- 介護施設の入居費を補助したいと考えている
自分の場合、両親が遠方に住んでおり、将来的に2人暮らしになる見通しです。
まずはどちらかの介護(排泄補助等)が必要になった状態で介護施設へ入居するケースを想定してみます。
- 介護施設利用期間:80歳から90歳まで(20~30年後)
- 入所費用:年間360万円(15万円×12か月×2人)
※介護付き有料老人ホーム等の民間施設を想定 - どちらかが要介護3程度になった段階で2人とも介護施設へ入居
ステップ2:将来の金額に換算ー終価係数ー
親が施設に入るのは 20年後。
今の360万円を「20年後のお金」に置き換えるときに使うのが終価係数。
インフレ率(物価上昇率)を2%と仮定し計算した結果が以下通りです。

つまり、今の物価で360万円かかる介護費用は、20年後には 500万円超える可能性がある。
そして30年後には650万円を超える試算になりました。
ステップ3:親の年金等を充当し手出しを想定する

親の年金から支払うことも含め、自分が備える金額を想定してみます。
国民年金を20~60歳まで納めた場合の年間年金受給額はひとり当たり約83万円です。
2人分の年金を充当すると、不足分は以下のように想定されました。

入居10年間の合計不足金額は4,600万円超という結果になりました。

5,000万円近い金額。ちょっと正直、ひとりでこの額を賄うのは厳しいです…。
試算してみて無理のある金額になったため、条件を変えてシュミレーションしてみました。
以下のように条件を変えました。
- 介護施設利用期間:父または母のみ80歳から90歳まで(20~30年後)
- 入所費用:120万円(10万円×12か月×1人)
※介護老人医療施設等の公的施設を利用 - 両親どちらかが介護が必要になった場合に、介護が必要な方のみ施設入居
- 介護が必要でない方は一人暮らし、又は子(カエ子兄、またはカエ子姉/兄姉ともに片道3時間県内)と同居
上記条件で以下内容となりました。


父、母のどちらかのみ民間施設へ入居する場合、10年間の不足分は1,257万円となりました。

それでも自分の老後費用、教育費に加えてこの金額を貯蓄していくのは無理じゃない…?20年かけて毎年どの程度積み立てて運用していく必要があるのでしょうか?
ステップ4:年間の積立運用額を想定してみるー減債基金係数ー
将来の一定期間後に目標金額を得るために、毎年の積立額を算出するのに使用するのが「減債基金係数です。
年利2%と想定し、1,257万円貯めるための年間積み立て金額を計算すると以下の通りになります。

20年後に目標金額を目指す→毎年51.5万円を積み立て運用する(毎月4.3万円)
30年後に目標金額を目指す→年間32.4万円を積み立て運用する(毎月2.7万円)

積み立て運用額を、年間金額・月間金額にまで落とし込むと、なんだか準備できそうな気がしますね。
試算して分ったこと
- 介助の必要性が低い段階で、両親ともに介護施設へ10年間入居する場合は、金銭的な面で賄えない可能性が高い。
- 両親のうちどちらかが介助が必要な段階で介護施設へ10年間入居する場合は、年間32.4~51.5万円を年利2%で運用すれば必要金額を賄える可能性が高い。
※片親は1人暮らし、もしくは子(カエ子姉、またはカエ子兄)と同居

入居しない方の親が施設を利用するようになった場合も、別途計算して加味する必要がありそうです。また、実際に介助する場面の多いカエ子姉、又はカエ子兄の金銭的・心理的負担も考慮したいものです。
まとめ
- 終価係数は「将来のお金の価値」「将来の物やサービスに金額」を見積もる便利ツール
- 減債基金係数「未来の必要額に対して、毎年の積立額」を逆算する便利ツール
- インフレを踏まえると、必要額は思ったより膨らむ
- 大きな額でも積み立てて運用していけば時間が味方してくれる!
- 親の貯蓄が少なく年金支給額も少ないが場合、兄弟で分担して貯蓄計画を立てると負担を分散できる

今後のライフプランを家族間で擦り合わせるたたき台として、まずはプランを作成してみてはいかがでしょうか。
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