ニュースで「米国のISMが予想を下回った」「ユーロ圏PMIが悪化」なんて見出し、見たことありませんか?
これらは、世界経済の“体温”を測るための指標たち。私たちが資産運用を考えるうえでも、株価・金利・為替の動きを理解するヒントになります。
ここでは、CFP試験の「金融資産運用設計」の学習範囲でもある主要な海外経済指標を、ニュースを読めるレベルで整理していきます。
アメリカの主な経済指標
アメリカは世界最大の経済国。その動きは日本の株式市場や為替相場にもすぐ影響します。
まずは主要な指標を押さえます。
| 指標 | 内容 | 公表機関・頻度 | 見方のポイント |
|---|---|---|---|
| GDP(国内総生産) | アメリカ全体でどれだけモノやサービスが生み出されたか。経済の“成績表”。 | BEA(商務省経済分析局)・四半期ごと | 実質GDP成長率がプラスなら拡大、マイナスなら縮小傾向。 速報性に優れているが後に大幅に修正されることもある。 |
| 消費者物価指数(CPI) | 家計が買うモノやサービスの値段の変化。インフレの代表的な指標。 | BLS(労働省労働統計局)・毎月 | コアCPI(食料・エネルギー除く)に注目。 |
| 生産者物価指数(PPI) | 企業間での取引価格(卸売段階)の変化。 | BLS・毎月 | 企業コストの変化→CPIへの波及をチェック。 |
| 失業率 | 働く意思のある人のうち、職がない人の割合。 | BLS・毎月 | 低下=景気拡大、上昇=景気後退のサイン。速報性に優れる。 |
| 非農業部門雇用者数(NFP) | 農業を除く雇用者数の増減。雇用の勢いを示す。 | BLS・毎月 | 景気との連動性が高い。毎月の発表でマーケットが大きく動く注目指標。 |
| ISM製造業景況感指数 | 製造業の現場の“景気の体感温度”。 | ISM(供給管理協会)・毎月 | 50が分岐点。50超=拡大、50未満=縮小。 |
米国は聞く内総生産の約7割を個人消費が占めることから、消費関連指数の注目度が高いです。
ISM製造業景況感指数を詳しく!
ISMは「Institute for Supply Management(供給管理協会)」という民間団体。
製造業の購買担当者(仕入れのプロ)に「受注どう?」「生産増えてる?」とアンケートを行い、結果を数値化したものがISM製造業景況感指数です。
- 50が基準点:50を上回れば景気拡大、下回れば景気後退の傾向。
- 5つの構成要素:「新規受注」「生産」「雇用」「納期」「在庫」。
- 速報性が高い:毎月初旬に発表されるため、GDPよりも早く“景気の変化”を教えてくれる。
読み方のコツ
- 総合指数が50超:製造業が拡大フェーズ
- 新規受注が減り在庫が増える:需要の鈍化に注意
- 価格項目が上昇:インフレ圧力→利上げリスク
ISMはアメリカ経済の「呼吸の速さ」を測るようなもの。
株式市場や為替相場は、この数字の上下に敏感に反応します。
経済指標を出している機関
| 略称 | 正式名称 | 役割 |
|---|---|---|
| BEA | Bureau of Economic Analysis(商務省経済分析局) | GDPなどアメリカ全体の経済データをまとめる。 |
| BLS | Bureau of Labor Statistics(労働省労働統計局) | 雇用・賃金・物価の統計を担当。 |
| ISM | Institute for Supply Management(供給管理協会) | 企業アンケートに基づく景況感指数を発表。 |
ヨーロッパ・中国の主要指標
世界経済を動かすのはアメリカだけではありません。
ユーロ圏と中国の動向も、マーケットに大きな影響を与えます。
ユーロ圏:総合PMI(Composite PMI)
- PMIは「Purchasing Managers’ Index(購買担当者景気指数)」。ユーロ圏経済の現状と見通しについてのアンケート調査。
- 製造業とサービス業を合わせた景気指数。
- 50が拡大・縮小の分かれ目。
- 発表:S&Pグローバル(旧IHSマークイット)
→ GDPより早く、ユーロ圏全体の動きをつかめる「先行指標」。
ドイツ:Ifo景況感指数
- Ifo経済研究所が毎月発表する企業アンケート調査。
- 「現状」と「6か月先の見通し」を組み合わせて作られる。
→ ドイツはユーロ圏の経済エンジン。Ifoが悪化するとユーロ圏の減速懸念が強まる。
中国:購買担当者景気指数(PMI)
- 国家統計局(政府版)とCaixin(民間版)の2種類がある。
- 製造業やサービス業の購買担当者を対象に行うアンケート調査。
- 50を境に拡大/縮小を示す。
→ 世界の工場・中国のPMIは、資源価格や輸出国の動きにも直結。
まとめ:景気指標は“世界のリズム”を知るツール
- アメリカのISM・雇用統計 → 世界市場のテンションを決める指標。
- ユーロ圏PMI・ドイツIfo → ヨーロッパ経済の勢いを読む。
- 中国PMI → アジア・資源国経済に影響大。
世界の指標を“並行して”見られるようになると、ニュースをただ聞くだけじゃなく、「なるほど、今は世界的に在庫調整局面だな」と読めるようになりますね。



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