評価されない私たちの隠れた仕事
たびたびSNSで勃発する「ワーママVS専業主婦」論争。それだけお互いがお互いの生き方に憧れを抱きつつ、譲れない何かを選んで生きているのだと思います。それぞれの事情があり、みな工夫して精いっぱい、子育ても生活もがんばっているのですから、正解はありません。
「頑張っているのに誰も評価してくれない。」
子育てや家事をこなす中で、一度は心のどこかで感じたことがあると思います。こういった家事や育児、介護など目に見えない労働が社会基盤を支えています。家事や育児は報酬が支払われず、社会的に過小評価されがちです。
わたしは、育児に専念できるのであればそうしたい。一方で収入が減ることへの不安が大きく専業主婦やパートへの転換を選べないフルタイムワーママのひとりです。

実家の維持や両親の介護を考えると、お金が必要だなあ…。
仕事に全力で向き合いながら、帰宅後はご飯づくり、子どものお世話、片付け、寝かしつけ。早朝に起きて夕飯の準備と朝の支度、週末は買い出しと掃除。気づけば1日が終わり、ソファに座る間もなく寝落ち。それでも誰かに「ありがとう」と言われることも少なく、自分の頑張りが“当然”のように扱われてしまう。
仕事のことを考えつつ子供の世話をしていると、精神的な余裕はゼロです。子供と穏やかな時間を過ごしたいのに、物理的に時間がない。このままでいいのか?迷う時も多くあります。
共働き世帯において女性が家事や育児などの家庭内労働を行うことを“the second shift(セカンドシフト)”と呼び、現代社会の最も過小評価されている労働形態の一つとされています。
でもこの「目に見えない頑張り」、計算してみると年収1000万円クラスの価値がありました。大変ですが、このまま続けられる限り続けていこうと思う理由はここにあります。
仕事をフルタイムで続けるか?時短にするか?扶養内パートにするか?専業主婦になるか?迷うママは参考にしてみてください。
試算で見えてくる“ワーママの本当の経済価値”
ここでは、以下のような現実的な家庭をモデルにしました。
- 夫:年収600万、残業40時間/月
- 妻:年収450万円(フルタイム勤務)
- 子ども:5歳と1歳
- 家事分担:夫5割、妻5割
- 育児分担:夫1割、妻9割(妻がメイン)
このモデル(ほぼ我が家!)をもとに、家庭の中で妻がどれだけ“経済的価値”を生み出しているかを見ていきましょう。
① 家事労働(折半)
全体的な家事量を週30時間(料理・掃除・洗濯・買い物・家計管理含む)と仮定します。
妻が5割=15時間/週を担当。家事代行・生活支援サービスの相場は時給1,500円程度。
15h × 1,500円 × 52週 ≒ 117万円/年
② 育児労働(妻9割)
5歳と1歳の子育ては非常に手間がかかります。
全体を週50時間相当(平日+休日合計)と見積もり、妻が9割=45時間/週を担当。保育・シッター等の相場は時給1,800〜2,000円。
45h × 1,900円 × 52週 ≒ 445万円/年
③ 家事+育児の無償労働価値(妻分)
117万円(家事)+445万円(育児)=約562万円/年
つまり、家庭内で妻が担っている無償労働を外注すれば、年間560万円前後のコストがかかるということになります。
④ フルタイム勤務(有償労働)
年収450万円。
→ 有償+無償合計:450万円+562万円=1,012万円/年
⑤ 年金差の考慮
フルタイム勤務で厚生年金に加入していることで、扶養内の場合よりも将来的に年金受給額が増えます。
ざっくり平均標準報酬月額37.5万円 × (5.481/1000) × 480ヶ月= 約98.7万円/年(≒月8.2万円)
→ 年換算すると+約98万円/年の将来価値。生涯でみると(20年間受給と仮定)、扶養内で働き基礎年金のみを受給するよりも約1,980万円の差が生まれることが分かります。
この将来への備えは夫の安心感も大きいのではないでしょうか。
妻の総合的経済価値まとめ
| 項目 | 金額(円/年) |
|---|---|
| 有償労働(給与) | 4,500,000 |
| 家事労働(5割) | 1,170,000 |
| 育児労働(9割) | 4,450,000 |
| 年金将来価値 | 980,000 |
| 合計 | 11,100,000円/年(約1,110万円) |
⑦ 夫との比較(参考)
夫の年収を600万円、残業40h/月で残業代を約120万円とすると年収計720万円。(残業を可能にしているのは、同じ時間で家庭を回している妻のおかげ。残業代の半分は妻の功績と言いたい!)
家事5割+育児1割の無償労働を加味(家事117万円×0.5+育児445万円×0.1=約97万円)すると
→ 夫の総合経済価値:720万円+97万円=約817万円/年。
結論
- 妻:約1,110万円/年(有償+無償+年金)
- 夫:約820万円/年(有償+無償)
したがって、家庭全体の実質的な経済価値のうち、妻が約55〜60%を担っている計算になります。つまり、社会的にも家庭的にも「家庭を支える中核プレイヤー」であり、市場経済でも実質的には“1,000万円プレイヤー”です。

もちろん、ママが仕事も育児も全力で頑張れるのは、外で頑張るパパの姿があってこそです。
専業主婦の方でも、家事ほぼ10割、育児ほぼ10割を担っていると考えると、かなりの見えない労働価値があると考えられます。
「私の頑張りは見えないけれど、確かに価値がある」
世の中は「お金になる仕事」しか評価しにくい仕組みですが、実際には、家庭を支える“無償の労働”が社会を動かしています。
朝に子供の支度を手伝っているとき、夜中に片付けをしているとき、子どもを抱きながら仕事のメールを返しているとき、そのすべてが見えないGDPを作っているのです。
家族の健康、子どもの成長、家庭の安定。そのすべてにあなたの行いが価値を与えています。
これからの課題:「家事・育児の再分配」と「自分の時間の確保」
もちろん、ここで終わりではありません。
1000万円相当の価値を生み出しているからこそ、自分の心と体を守る“リソース配分”を見直すことが大切です。
たとえば
- 家事代行や宅配を週1でも導入する
- 夫の育児シフトを少しずつ増やす
- 「完璧」を目指さない
ほんの少しの工夫で、負担は確実に減ります。
ワーママが自分を追い詰めず、長く働ける仕組みこそ社会に必要です。
また、子供の成長段階において、子供の教育や心のケアに向き合う必要があるタイミングが出てくるかもしれません。その場合はいま大切にすべきものをいま一度考え直すタイミングなのかもしれません。お母さんは価値を金銭に換算できない、誰にもかわることができない仕事、ですから。
最後に:あなたは「すでに十分に価値のある人」
多くのママが「自分なんて」と思いがちですが、データで見ると、あなたの働きは社会的にも経済的にも大きな価値を持っています。誰かに認められなくても、数字が証明しています。
フルタイムで働き、家を支え、子を育てる。
それは年収1000万円の仕事量をこなしているのと同じです。子供や家族の選択肢を大幅に増やすことができます。誇りをもって生きましょう!



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